知っていることの弊害(上里先生の講演より)


人間は、幼児期のパターン思考から言語思考へと移っていきますが、思考力の土台になるのは知識や経験
です。
例えば、昔から『つるかめ算』というのがあります。<つるとかめがあわせて10匹います。足を数えたら全部で
32本でした。つるとかめはそれぞれ何匹でしょう>という問題です。
つるかめ算の場合、子どもたちは前提として、つるの足が二本で、かめの足が四本であるということを知って
いなければなりません。なぜなら、問題にはつるとかめが何本の足を持っている動物かが説明されていないか
らです。
つまり、思考する前提として、知識が必要であることの顕著な例ですが、知識も与え方を間違えると、知識ゆえ
に思考力が鈍化してしまいます。そうした例を二つ紹介しましょう。

●知識の落とし穴 その1

例えば、<アルファベットはAから始まって、Zで終ります。ではAからはじまってKで終るものはなんでしょう>
という小学校の入試問題を考えてみてください。
小学校の入試問題に、難しい英語の問題がでるはずもないのに回答しようとする大人が英語に強かったりすると、
頭をひねりまくって該当する英単語を思い出そうとします。
つまり、大人は自分の知識が邪魔をしてしまうわけです。
皆さんはどうでしょうか?ちなみにこの問題の答えはトランプです。なるほど!とうなずいている方々も多いよう
ですが、幼児では数人がすぐに正解を言い当てます。
それは彼らの知識が狭く、AではじまってKで終るものとしては、トランプ以外知らないからです。

●知識の落とし穴 その2

また、次の問題も考えすぎるとできません。<さくらは246です。つばきは357です。ではバラはいくつでしょう>
この問題の答えは56です。
種明かしをしましょう。
問題のポイントは平仮名と数字を単純に対応させているだけですから、『ば』と『ら』に対応した数字を読み取れば
よいわけです。
これも子どもは簡単にクリアします。一方、大人は奇数だの偶数だのという知識にとらわれて、難しく考えすぎて
正解できません。


・上里龍生先生
子羊幼稚園園長(学校法人上里学園理事長/日本幼児基礎能力研究会会長)
上里式教育理論で著名な教育家であり、親子二代に亘る幼児教育の実践は、能力開発のあるべき姿を
実証した具体的な取り組みとして、学校教育全体に大きな影響を与えている。
また著作活動も旺盛で、教材開発企業『エフエイ研」から、独創的な各種のプリント教材(みみず、めだか
すずめ、てんとうむし)、素読教材、短冊教材などを多数出版している。

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